ヌケルアダルト作品（官能小説更新情報）

　最近、清純派で人気の出てきた若手女優、神野千春(かみのちはる)は、北沢(きたざわ)プロダクションに所属している。その神野千春が今日出社すると、突然、社長の北沢浩太郎(きたざわこうたろう)に呼ばれた。千春は緊張した面持ちで社長室のドアをたたいた。
「どうぞ。」
千春は、ドアを開けた。
すると、北沢が社長の椅子に座ったまま笑顔を浮かべて千春に中に入るように右手で手招きした。千春が部屋に入ると、北沢は椅子から立ち上がって、右手で社長の机の前の応接セットのソファーを指さした。
「千春ちゃん、まあそこのソファーにでも座り給え。」
「わかりました、社長。」
千春が応接セットのソファーに座ると、北沢は千春の向かい側のソファーに座った。
すると、女性秘書が千春と社長にコーヒーを持って来て、部屋から出て行った。
「まあコーヒーでも飲み給え、千春ちゃん。」
そう言うと、北沢はコーヒーを一口飲んだ。
「いただきます。」
千春がそう言って、コーヒーを一口すすると、北沢が口を開いた。
「千春ちゃん、実は君の仕事のことだが、来月から関東テレビの秋の木９ドラマの仕事が入っていただろう？」
「ああ、はい、ドラマ「ラブウォーズ」のヒロインの仕事のことですね。わたし、久しぶりの恋愛ドラマのヒロインなんで今から張り切っているんですよ。」
千春は笑顔でそう言った。
「そうか。」
北沢は難しい顔をして黙ってしまった。
「社長、「ラブウォーズ」のことで何かあったんですか？」
北沢は重い口を開いた。
「千春ちゃん、実は関東テレビが「ラブウォーズ」のヒロインをムーン芸能の環水穂(たまきみずほ)に変えると言ってきたんだ。」
「な、何ですって！」
千春は目をつり上げてそう叫んだ。
「たぶん、最近関東テレビではムーン芸能の女優をあまりドラマの主役級に使っていないから、ムーン芸能の社長の八田が関東テレビに圧力をかけたのだと思う。それで、君にはヒロインの代わりに「ラブウォーズ」の撮影監督がヒロインのライバルでヒロインをいじめる役をして欲しいと言ってきている。それについて君はどうしたい？」
「そ、そんな清純派のお嬢さんのわたしのイメージに合わないヒロインを引き立てる役をやるわけないでしょ。ヒロイン以外の役は、わたしはお断りよ、社長！」
「千春ちゃん、でも撮影監督は高原監督がすることになったんだよ。」
「た、高原監督なんですか？」
「そうだ。人気監督で彼が撮影をしてヒットしたドラマも多い。だが、彼は一度自分の作品の出演を断った俳優や女優は二度と使わない。そのことは君もよく知っているはずだ。だから、君がもし「ラブウォーズ」のヒロインのライバル役の出演を断った場合、高原監督の作品には二度と出られなくなってしまう。これは君にとってもうちのプロダクションにとっても大変なマイナスになる。だから、君にはつらいだろうがヒロインのライバル役を引き受けてくれないか？」
「わ、わたしに環水穂の引き立て役をやれって言うんですか？」
「そうだ。辛いだろうが、自分のこれからの女優人生のため、将来北沢プロの看板女優になるために今回は我慢してヒロインのライバル役をやってくれないか、千春ちゃん。」
「い、いやです！」
「そうか。ではわたしも鬼になろう！神野千春、これは社長命令だ！」
「しゃ、社長命令ですか？」
「そうだ！だから、この仕事を引き受けなければ君はクビだ、神野千春！」
「受けなければ、クビなんですか？う、うえーん・・・・・・。」
突然、千春は泣き始めた。
北沢は立ち上げると千春の横に行って千春の隣に座った。
「なあ、千春ちゃん、わたしも意地悪でこんなことを言っているんじゃないんだ。だから、今回だけは我慢して仕事を引き受けてくれないか？お願いだ。それが君の将来のためにもうちのプロダクションのためにもなる。どうか我慢して引き受けてくれないか、千春ちゃん？」
「う・・・・・・・うう・・・・・・ううう・・・・・・。」
千春はしばらくの間、泣き続けた。

　その日の午後、神野千春は新東京テレビの撮影所の中の喫茶室で同じ事務所の同期の坂井由梨(さかいゆり)とジュースを飲んでいた。
「それで、千春。あんたはそのヒロインのライバル役を引き受けたの？」
「ええ、引き受けたわ。だって、社長に社長命令だと言われたら、もうどうしようもないじゃないの。」
「そう。そうしたら、役だと思わないでマジで環水穂をいじめるつもりでやればいいじゃないの。」
「でもあんまりマジでやったら、清純派で通っているわたしのイメージが悪くなるからさあ。社長は芸の幅が広がるからいいと言うけどわたしはあんまり悪女の役はやりたくないし、かといって高原監督の仕事は断れないし、正直、困ったなと思っているのよ。」
その時、坂井由梨が驚きの声を上げた。
「あっ、千春！あっちから環水穂が来るわ。そう言えばさっき新東京テレビの二時間ドラマを環水穂主演で撮影しているとマネージャーが言っていたわ。うわさをすると何とやらね。」
千春がそう言うと、環水穂が喫茶室に入って来た。
そうして、すぐに神野千春がいるのに気がついた。
水穂は千春と由梨のそばにやって来た。
「こんにちは、神野さん、坂井さん。」
「こんにちは。」
坂井由梨は笑顔でそう言った。
「こ、こんにちは・・・・・・。」
千春は顔を引きつらせて、そう水穂に言った。
「どうしたの、神野さん。何か顔色があんまりよくないようだけれど、体調でも悪いの？」
「そ、そんなことはないわ。」
「そ、そう。あのう今度「ラブウォーズ」でわたしと共演することになったらしいわね、神野さん？」
「え、ええ、そうね。」
「わたしは、てっきり神野さんがヒロインをやって、わたしがそれをいじめる悪女役をやるのかと思っていたら、どうやらその反対らしいわね、神野さん？」
「そ、そうね。」
千春は両手を震わせながらそう言った。
「若手のナンバーワン女優のわたしを引き立てる役だけれど、いじめ役頑張ってね、神野さん。」
「何ですって！」
そう言うと、千春は立ち上がった。
「あらどうしたの？怖い顔をして立ち上がったりして。」
「若手のナンバーワン女優はあなたじゃなくてわたしよ、環さん！」
そう千春が言うと、環水穂は驚いたような顔をして千春を見つめた。
「あら、神野さん。あなたが若手のナンバーワン女優だったら、どうして「ラブウォーズ」でわたしがヒロイン役をやってあなたがヒロインのいじめ役という脇役のそれも汚れ役をやるの。それって、おかしくない、神野さん？」
「う、うう・・・・・・。」
「だから、トップ女優はわたしよ、神野千春さん。」
そう言うと、水穂は千春の額を右手の人差し指でつっついた。
「何をすんのよ！」
そう言うと、千春は水穂の右手を左手ではらって、水穂を睨みつけた。
そんな千春を見て、水穂は笑顔を浮かべた。
「どうしたの、神野さん、体をを震わせたりなんかして。トイレでも行きたいの、神野さん？」
その時、環水穂のマネージャーが喫茶に入って来て、水穂を呼んだ。
「あら、撮影の続きが始まるみたいだわ。それじゃあ、またね、神野さん、坂井さん。」
そう言うと、霞翔子は喫茶室から出ていった。
「くそう。あの女、絶対に許さないわ！」
「お、落ち着いて、千春。」
そう言うと、坂井由梨は体を震わせる千春の両手を後ろから握った。

　その日の晩、仕事が終わって、マンションの自室に帰ると、千春は携帯電話を取りだしてボタンを押し始めた。
ボタンを押し終わると、電話の呼び出し音がなって電話がつながった。
「もしもし、鬼塚です。」
「ああ、健ちゃん、わたしよ、千春よ！」
「ほう、携帯の番号を変えているから、千春からの電話だとは番号見ただけではわからなかったぜ。それにしてもどうしたんだい？清純派女優として売り出すから、昔のヤンキー仲間とは手を切ったんじゃなかったのかい？」
「そうね。一度は手を切らないといけないと思って、こうして携帯の番号も変えたりしたの。それはわたしが悪かったわ。ごめんなさい、健ちゃん。」
「おいおい、どうしたんだい。おまえの方から謝ったりして、千春？」
「それはね、わたしがやっぱり健ちゃんや昔の仲間とは仲良くしておかなくてはいけないことに気づいたからなの。」
「ん、芸能界の仕事をしていて何かあったのか、千春？」
「ええ、わたしの話を聞いてくれる、健ちゃん？」
「いいよ、そうしたら明日にでも会おうか、千春！」
「うん、お願い！」
千春は真剣な顔をしてそう言った。
（第２話につづく）
［今回：第１話→つづき：第２話］


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